新型コロナのPCR検査では唾液検体でも本当に十分な感度が出るのか?

COVID-19

前々から気になっていたことについてちょっと調べてみました。

唾液検体?

未だに世界的感染拡大が収まる気配のない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

その感染の有無を確認する方法として最もよく知られているのが「PCR検査」であり、現在日本ではもっぱら「唾液検体」を用いた検査がなされています。

昨年の秋頃からでしょうか、日本ではPCR検査をする際の検体として、初期の頃に用いられることの多かった「鼻咽頭ぬぐい液」ではなくこの「唾液」を用いる方法にシフトしたわけですが、個人的にはずっと気になっていたことがあります。それは「唾液検体でも十分な感度が出るのか?」という問題です。

「まあ科学的エビデンスがあるから採取が簡単でより安全な唾液でやっているのだろう、、、」とは思っていたものの、新型コロナ感染症の場合は主に下気道で炎症が起きるわけで、「本当に唾液でも大丈夫なの?」という疑問を持っていました。

症状はあるのに陰性

最近、日本にいる身内と久しぶりに連絡を取る機会があったのですが、彼は「PCR検査の感度は多分一般的に言われているよりもだいぶ悪い」と断言していました。

なんでも、彼には少し前に新型コロナと思しき症状が出たのだとか。発熱し、味覚が完全に消失したとのこと。味覚がなくなるという経験をしたのは今回が初めてだったそうで、「100%間違いなくコロナだと思った」とのこと。しかしながら、PCR検査の結果はなぜか陰性だったのだとか。

私は普段Twitterをよく利用しているのですが、同様の内容のツイートはこれまでに結構な回数目にしました。

とまあそんなこともあり、PCR検査というのはあまり感度の良い検査ではないのだろうなと思ってはいたものの、特に日本では唾液検体がメインになっているため、このことがさらに感度を下げる原因になっているのではないかと思ったのです。

唾液でも悪くないらしい

ということで軽く調べてみたところ、どうやら北海道大学のグループが発表したこの論文が唾液検体使用のサポートをしている可能性が高そうだということがわかりました。

Mass Screening of Asymptomatic Persons for Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Using Saliva
Detecting severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 in asymptomatic people is an urgent priority to prevent and co...

内容としては、「国際線の空港検疫および保健所が認定した濃厚接触者、計1,924名の無症状者から唾液と鼻咽頭ぬぐい液を採取しPCR検査を実施したところ、陽性者は唾液48例、鼻咽頭ぬぐい液46例であり、それぞれの感度は83-97%対77-93%、特異度は両者ともに99.9%以上であった。また陽性例のウイルス量は両者で同等であった。」というもの。

当該論文のFigure 2(図2)が非常にわかりやすいです。

この図からは、感度(sensitivity)に関しては、唾液検体(saliva)の方が鼻咽頭ぬぐい液(NPS)よりもむしろ良いくらいだということがわかります。

「そもそもコロナかどうか確実に判定する方法なんて存在しないのになぜ感度の計算なんてできるのだろう?」なんて思われた方もいるかもしれませんが、それに関しては論文の最後に説明があります。

The current study lacks longitudinal data and clinical confirmation of positive cases, without which the two sample sets are critical to comparison. In the absence of a true diagnostic gold standard, however, we used the most appropriate statistical model available, as described in the Methods.

https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1388

要は、「確実に判定する方法はないけれど、最も適当と思われる統計模型を用いて解析するとこういう結果になる」ということです。

そんなわけで、感度の絶対値が本当に正しいのか(本当に90%前後の感度があるのか)に関しては私にはわかりませんが、とりあえず、唾液検体だからといって、感度が鼻咽頭ぬぐい液を用いた場合よりも有意に劣るということはなさそうだとは言えるのではないでしょうか。

全体のサンプル数はまあいいとして、陽性者数が40人台という部分がちょっと引っかかりはしますけれどね。そのくらいの数字だと統計誤差も大きそうだなと。今回の10倍くらいの規模のデータセットがあるともっと色々とわかるんだろうな、、、という気がします。ただまあ、こういったデータを取得するのは大変なのでしょうね。唾液採取で済むところを鼻咽頭ぬぐい液も取らせてくれなんて言われたら拒否する人も多いでしょうし。

結論

一般的に言われているPCR検査の感度は「6~7割」です。「良くて7割」なんていう表現を今回のコロナ禍でよく耳にしました。そういった医師や専門家の方たちの「肌感覚」というのは結構信頼が置けるものだと私は考えています。

ですからまあ、さすがに90%ということはないのでは、、、という気はしますが、とりあえず検体に関しては唾液でも問題ない可能性が高そうです。私もPCR検査は何度も受けましたが、鼻咽頭ぬぐい液の採取には少々痛みも伴いますしね。どちらでもいいのなら私だってもちろん唾液の方を選びたいです。

個人的に重要だと思っているのは、味覚や嗅覚に明らかな異常が生じた場合は、たとえPCR検査で陰性だろうと、感染したのだと思ってそのつもりで行動するべきということです。私は今まで生きてきて味覚がなくなるなんていう経験をしたことは一度もありません。現在日本にいてそんな症状が出たら感染はほぼ間違いないでしょう。その場合は他者との接触を避ける等の配慮が必要不可欠だと思いますし、そういった各々の努力無しにはなかなか状況は上向かないのではないでしょうか。

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