深圳の日本人学校に通う男子小学生が刺殺された事件に関して在中邦人として思うこと

彼岸花 家庭・家族

2024年9月18日の朝、中国の広東省深圳市で日本人学校に登校途中だった10歳の男子小学生が、同行していた母親の目の前で44歳の男に刃物で腹部を刺され、搬送された病院で19日の未明に亡くなった。

この日は、満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日として知られている。93年も前の話ではあるが、現在でもいわゆる反日感情の高まる「センシティブな日」の一つであり、在中邦人としては特に警戒すべき日とされている。

いろいろと語りたいことはあるが、私ももう最近の日中間の緊張(と言ってもあまりにも一方的だが…)の高まりに関しては正直疲れ切ってしまっていて、そこまでの元気はない。ただ、有事の発生が深刻に懸念される今、「中」にいる者が黙っているのも些か問題なのではないか?という思いが個人的にはある。したがって、備忘録も兼ねて少しだけ、今書いておくべきと思われることを手短にここに残しておこうと思う。

本件に関しては、似た年齢の子を持つ親としてはただただ胸を抉られる思いだ。柳条湖事件だか満州事変だか知らないが、そんなものは私の親の時代の話ですらない。なぜ日本人というだけでこの男児は殺害されなければならなかったのだろうか。まだヘイトクライムだと決まったわけではないが、これだけ条件が揃っているわけで… そこに関してはもういいだろう。

子供も時には死ぬ。悲しい事故や事件は世界中で起こっている。ただ本件に関して重いのは、日本人、特に幼い子供を明確な意図を持って襲撃した可能性が極めて高いという事実。当人の「運」が大きな要素となる通り魔事件の類いとは根本的に異なる。

故に、在中邦人としては絶望すら感じる事件である。

現在こちらでは「そもそも『日本人学校』なるものが中国に存在していること自体に問題がある」といった議論が巻き起こっているようだが、それに関しては割愛する。「まああなた方はそう言うでしょうね」としか思わないし、相互理解の大切さや日本人学校の存在が中国にとっても利益になり得るといった話をしても伝わらないことは理解している。それに、今の私はいろいろと自由に発言できる環境にはいない。

ただ、一つ言っておかなければならないのは、同様の事件は今後も発生する可能性が高いということ。そういった「方向」に現在この国は向いているし、向かせたいと思っている人たちがいることに関して疑う余地はない。日本人学校に通うということは、「私は日本人です」と大きく書かれた札を付けて歩いているのと同じである。駐在員でこちらに家族を連れて来ているような方々は、早急に対策を取るべきだと言わざるを得ない。

次に、日本にいる日本人の皆さんに一つだけ聞いていただきたい話がある。SNS等の匿名で書き込める空間で散見される「中国なんかに行く方が悪い」という声に関してだ。

私は中国生活が長く、大した期間中国で暮らしたことすらないような日本在住のいわゆる識者たちよりも中国に関しては詳しい部分も多々あると考えている。その観点から言いたいわけだが、これが仮に「逆」(中国人の子供が日本で…)であったならば、殺害された自国民を自国民が誹謗中傷するなどということは絶対にないと断言できる。むしろ、先日の処理水放出の時のように、国全体を挙げて大規模な反日運動を始めるであろうことは想像に難くない。

なぜ最近の日本人はこうもバラバラなのだろうか?

私は保守派の日本人、民主主義者だが、いわゆる自由主義、個人主義といったようなものが極まるとここまで「◯◯人」としてのまとまりが薄れるのかと、考えれば考えるほどに、一体どんな社会が真に望ましいのか、自分の中の「正しさ」のようなものが揺らぎそうにすらなる。

駐在員ではなく現地採用で働いている者として、いろいろと言いたいことはあるが、今回は「皆いろいろと事情があって中国にいる」という言葉に留めておこうと思う。

繰り返しになるが、殺害された男児やその親を非難するような人間は深刻な病気だと私は思っている。

9月ということで、連日職場のキャンパス内では迷彩服に身を包んだ大勢の新入生たちが必修科目である「軍事訓練」に勤しんでいる。

今朝、襲撃された男児が亡くなった旨ニュースで知り、出勤、隊列を組んでいる学生たちを目にして胸が苦しくなった。

亡くなられた男の子のご冥福を、心からお祈り申し上げます。

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